一番早い花火大会。
「花火大会に行きたいなあ」
「………」
人混みほど狙われやすい。
俺は大丈夫だがりおが心配だ。
「行きたいなあ……樹にでも連れてってもらおうかな」
バサッ。
読んでいた本を取り落とした。
「……連れてってやる」
「わーい」
「人混みで離れんなよ」
「うん!」
仕方なしに出かける用意をした。
りおは楽しみで浴衣を手にして榊の元へと浮き足だっている。
「榊さんに着せてもらっちゃった!見て!」
まだリハビリ中の腕には浴衣を着る力はない。
榊に着せてもらい満足気だった。
「とっても似合いますよ」
「………」
「馬子にも衣装か」
「それ、誉め言葉じゃないっての仁さん知ってる?」
「誉め言葉じゃねえのか?」
「もう!違うよ」
「………」
「その藍の色と真っ赤な牡丹の柄の浴衣とても素敵ですよ」
「榊さん、ありがとう」
ニコニコと嬉しそうに鏡を覗く。体を捩って結んだ帯を眺め、前髪をいじる。
「曲がってますよ。結い直ししましょう」
髪を結い直してもらうりおはいつの間にかこの屋敷のみんなと仲良くなり溶け込んでいた。



