―――いつか。
りおが俺の元から飛び立っていく。
それを笑顔で見送ることができるだろうか?
「若、欲しいと思うものは手を伸ばさないと手に入れられないものなんですよ」
「………」
「失ってしまってから気づいても遅いんです」
「………」
「失ってしまってから取り戻そうとしても取り戻せない」
「……おまえは失ったことがあるのか?」
「さあ、どうでしょう。若の想像におまかせします」
「………」
右にウインカーを上げてハンドルを切る。
その横顔にはなんの憂いも浮かんではいなかった。
「ひとつ言えるのは、
このままだといつかはりおさんを失う時が来るっていうことだけです」
やけに説得力のある榊の声が胸に突き刺さった。
―――このままだと失う
それが間近に迫っていた。