『若恋』若恋編




「近所に住んでる娘だ。家族ぐるみの付き合いをしてる。つうかおまえには関係ない話だろ」


成田は煙に噎せながら苦笑した。


「そんなこといいから少し寝ろ」

「屋敷にりおを無事に連れてくまでは気を抜くわけにはいかねえよ」

「強情なヤツだな。そんな窶れた顔してるのに」

「俺はいつもこんな顔なんだよ」

「ウソつけ。夜の帝王でフェロモン出しまくってる美丈夫のくせに」



「……殺すぞ」



ふたつのマンションの最上階で繰り広げられる夜毎の饗宴。

甘い香りをさせた女を喰らう。

腰を振り続けて失神させるまでイカせる。

ひとときの快楽。
吐き出される吐精。

夜毎変わる女には執着もなければ、その後女がどうなろうと知ったことじゃない。



「おまえはいつか女に背中を刺されるだろうかと思ってたよ」

「冗談じゃねえ。そんなヘマするか」


「今じゃ、お嬢ちゃんひとりの身を苦にして飯も食えねえ、眠れもしねえなんておまえを知ってる誰が想像できただろうな」

「……うるせえよ」

「いや、マジでおまえがそんな顔するなんて思いもよらなかったよ」