2日目の夜。
動けないりおの元へこっそりと忍んできた人影。
足音を消すために裸足だ。
枕元のスタンドの灯りだけが部屋の中をうっすらと照らし出している。
カーテンに映る揺らぐ人影は思ったよりも小さい。
「カサカサ」
乾いた小さな物音が人影の懐から聞こえた。
熱が高いりおが物音で目を開けた。
「起きてる?りおちゃん?」
細くて軽い声。
「うん。起きてる。こっち来て」
りおに呼ばれた人影の揺らぎが枕元に近づいていく。
「ぽぽちゃん」
入院患者を置かない成田が特別に部屋を与えた少女の愛称だ。
一昨日、倒れたと連れてきた男から奪い取って診た少女の名前が彩萌(あやめ)だ。
ぽぽは成田が呼んだ愛称。
肺炎の診断で10日ほど預かることになったと聞いている。
「折り紙で鶴を折ってきたの。早く良くなるようにここに置くね。具合はどう?お水飲む?」
枕元の椅子に少女が腰かけた。



