仁の野性的勘はよく当たる。
「今夜か、明日の夜、数日内か」
可能性の高いのはと呟いた。
「昼間だとしたら診察にくる一般人を巻き込むのを承知でくるだろうしな」
「いずれにせよ、迎え撃つようにはしておく必要があるな。ここで銃撃戦だなんて御免だ」
成田に迷惑は掛けたくない。
成田の父にも世話になってきた。評判を下げるような真似はしたくない。
「仁、毅と一也を今夜見張らせろ。明日の夜は前広と拓也だ」
この両日で来なかったらそんときゃまた考える。
来るなら、早いうちだろう。
「わかった。そうするぜ」
ふんぞり返っていた椅子から仁が立ち上がって、一緒に廊下へ出た。
「あ、大神さん」
廊下で大きな荷物を持ったりおの両親と会った。
「天宮さん」
横で仁が足を止めた。
その目が大きく見開かれている。
「仁、どうした?知り合いか?」
「………いや、人違いだ」
―――その時
仁が歯を食い縛り拳を握りしめていたことに俺は全く気づかなかった。
運命という歯車が回り出していることに―――
誰も気づいてはいなかった。



