『若恋』若恋編





他の誰かに任せるなんてできねぇ。


「俺が面倒をみる」

「………」

「榊、悪りぃな」

「……いえ、」


もうそれ以上榊は何も言わなかった。


「若の性格は知ってます。こうと決めたらそれを覆すことはない」


苦笑い、あるいは諦めに似た笑みが浮かんでいた。


「りおの両親とは俺に任せると話はついてる。ある程度よくなるまでは母親がついてくれると言ってるし、連れて帰る」



それが俺の出した結論。



離れることで護るなんて俺にとっては、それは護ることにはならねぇ。

俺の手で守ってこそ、初めて護ってることになる。



「奴らがりおを狙うっていうんなら、俺がこの手で護ってやる」



「……若らしいですね」

「榊?」

「そんな若が好きですよ」

そう言って、ふ、と口元を歪めて笑う榊の瞳に翳りが見えた。