偶然。


大神物産本社からの帰り道に龍神会の輩に襲われ、車のタイヤが裂けるはずないのに裂けたのが偶然。

乗り上げた歩道にりおが居たのも偶然。

俺を庇ってりおが飛び出したのも偶然。

偶然が重なった事故だから榊は俺に悪くないから自分を責めるなという。



「彼女、りおさんにはそれなりの慰謝料を用意」
「よせ」



思わず榊の言葉を遮った。

聞きたくない。

金で解決していい女じゃない。



「その話はよせ」

「若、」

「………」

「彼女、りおさんに何を拘っているんですか。彼女はわたしたちとは違う世界に住むひとです」


わかってる。
そのくらいわかってる。


「わかってるならば、屋敷に連れ帰るのではなく、成田の言う通りに彼女を転院させるべきです」

「………」

「若の命を守ってくれた彼女にはわたしも感謝していますが、それとこれは違います。若が介入していいものではありません」