「どうした?榊?」


「……いえ、なんでもありません」


何かを言いたげな、けれど、諦めに似たため息が榊の口から漏れた。



「若、りおさんが3日後に屋敷に移動できるように手配します」

「ああ、頼む」

「今回の騒ぎについてはわたしから組長にうまく報告をしておきます」

「……悪りいな。面倒を掛ける」

「いいえ、若の為とあらば」


榊がじっと俺を見つめ、それから傍らで熱にうかされているりおに視線を移した。



「……辛そうですね」

「………」


何も答えられない。
どう答えていいのかわからない。

ただただ傍らにいてりおを見ているだけしかできない。

それが辛い。



「……若、りおさんはわたしがみているので少し横になった方が、」

「いや、このままでいい」


再び俺を見て心配する榊から目を背ける。



苦しげに熱い呼吸するりおを誰にも任せたくない。



「……若、彼女のケガは偶然の事故です。若が自分を責めるのは間違ってます」