「……榊さん。榊さんは、何に怯えてるの?」
「……何も」
榊はりおに背を向けたまま答えた。
「いつもの榊さんらしくないよ。ひかるが嫌いじゃないくせに」
「………」
「ひかると付き合うって言ったのは榊さんでしょう?だったらなぜ?ひかるが嫌いになったの?」
りおは舐め取られた指を握り困惑しながら榊の背中をじっと見ていた。
「ひかるちゃんのことは嫌いじゃないです。むしろ好きです」
「だったらなんで」
「…わたしといるとひかるちゃんが狙われます」
「……狙われる?」
意味がわからず次の言葉を待った。
「大事なひとを傷つける世界に巻き込みたくないんです。離れたほうがひかるちゃんのためなんです」



