りおのさらさらの髪を指に絡めながら首に手を伸ばし引き寄せる。

榊が見ていようが構わずにそのくちびるを奪う。


「奏さん、やだ」

「おまえは俺のもんだろう?」

「そうだけど……でも、ダメ」


顔を赤らめたりおが榊を気にして恥ずかしそうに離れようとすると、榊は堅い表情で失礼しますと頭を下げてテラスを出ていった。



ため息が出る。

こんな風に榊に当たるなんてらしくない。
榊だって気を悪くしたに違いない。


「奏さん。わざとだったのね?」

「ああ」

「どうして?榊さんが気を遣って部屋に戻っちゃったよ」

「わかってる」


榊がいなくなり引き寄せたりおの体を強く抱き締める。
そうでもしていないとりおが誰かに拐われてしまう。

「もう、奏さんたら誤魔化して」

「………」



りおの心臓の音を聞くと安心する。この手に抱いているだけで守れてると実感できる。