彼女が目を丸くした。


「え?」


うまく言葉が出てこない。飲み込めない。そんな顔をしていた。


彼女を傷つける原因となった俺に任せると彼女に…。

彼女が拒否するんじゃないかと思えた。



「りお、大神さんのいうことをよく聞くのよ」

「お母さん?」


ふ、と、彼女の母親が口元に笑みを浮かべ、父親は丁寧に頭を下げた。


「大神さんにはご迷惑をお掛けすることになるかもしれませんが娘をよろしくお願いします」




「―――実は、俺は、」


「存じてます。大神組の跡取りですよね」


「……大神、組?」


彼女がピクリと反応して俺をじっと見上げた。


大神組はこの街で知らぬ者がいないほど有名だ。


表は全国に名を馳せる大神物産。
裏の顔はヤクザ。

知らぬ者はいない。