俺のいた中央のテーブルから少し入り口寄り斜めの後ろ。
品の良さが滲み出る柔らかな物腰で取り巻きと談笑しながらグラスを傾ける男。
「あの人ずっと笑ってたの」
「ああ」
「笑ってた?」
「ショーを見てなかったの。ずっと」
今なら俺もわかる。
狩野がショーをそっちのけで何を見ていたのか。
ショーよりも数段面白いものが見られる。
森内がもし暗殺に失敗しても自分は痛くも痒くもない。
親父と俺の命がとられたら、全部森内のせい。
森内も潰したければ誰にも知られないように密告してやればいい。
『すべては森内ひとりがやったこと』。
狩野が陰で森内を操っていたことなど誰にも気づかれない。



