「お父さん、」

「大神さんから詳しい話を聞いたよ。おまえが無事ならそれでいいから」


父親が優しい声を掛けると彼女の眼に光るものが浮かんで目尻を伝い落ちた。

止めどなく流れる。



「あらあら、泣かないのよ」

「だって」

「まるで大きな赤ちゃんみたいね」

彼女も母親も泣いていた。傍に立つ父親も目には涙が光っていた。


「りおの気持ちはよくわかった。ケガしてしまったのは辛いが誰も悪くはないのもわかったし、もういいんだよ」

なにも心配しないでいい。

手を伸ばし流れる涙を指で拭った。


「…お父さん」

「心配ないからな」

「…うん」



彼女が誰も悪くないと俺を庇う。
誰も悪くないわけがないのにそれでも俺を悪くないと言ってくれた。

胸が痛い。
そこまで言ってもらえるほど俺は善人ではないのに。



「熱、上がってきたわね」

額に触れる母親の手に彼女が頬を摺り寄せて甘えるのを見ていた。

薬はまだ完全には切れてはいない。



「ねぇ、りお、聞いて。お母さんたちね、大神さんにりおを任せようと思うの」