麻酔が切れかかって彼女が浅く速い呼吸をして苦しがる。
身を捩りもて余した熱を逃がそうとする。
「りお、苦しい?」
再度の呼び掛ける声にうっすらと重い瞼を開けた。
「お、か、あ、さ…ん」
彼女が焦点の合わない眼を開けて呼んだ。
「……お母さん」
「何?りお」
「あのね、……悪くないの。大神さんは」
彼女の視線の先が揺らぐ。
「わたしが、……飛び出したの。だから、……大神さんは悪くないの」
苦しい息の下から絞り出すような声がした。
「わかってるわ。だから安心して」
「本当に……悪くないの、わたしが、勝手に、……したことなの」
「いいの。わかってるからりお、お母さんついてるから。お父さんも来てるわ。安心して」
「うん」
焦点が次第に合ってきて、母親が穏やかに返事をすると安心したようだった。
よかった。
彼女のくちびるから薄い笑みが零れた。



