『若恋』若恋編





―――お願いします




「……奏、」


頭を上げられるわけがない。

大事な娘を傷つけた原因である俺を許すはずもない。


「顔を上げてください。えと、……大神さん」

「娘を医者に診せてくれて感謝しています。どうか頭を上げてください」


頭を下げたままの俺の手に彼女の母親がその上に指を重ねた。


「大神さん、頭を上げてください」


父親の優しさの滲む響きにゆっくりと顔をあげる。

目の前には彼女とよく似た眼差しがあった。



「すべて大神さんにおまかせします」


キュッと全身に力が込められる。


「娘を頼みます」

どうかよろしくお願いします。



反対に頭を下げられ身が引き締まった。






「ありがとうございます」






ありがとうございます。