仁とりおを連れ雑技団を訪れると想像もつかないほど皆が皆身軽だった。
控え室と言ってもかなりの広さがあり、それぞれにストレッチし本番に備えている。
「大神さま、この度はありがとうございました」
流暢な日本語で挨拶する団長がにこやかに話しかける。
「あちらの方が、そうですか?」
「ああ、俺の妻だ」
美しく着飾ったりおを見た。
ふたりは俺の傍を離れてふたりを声を頼りに探している。
化粧を念入りにしてる女。
髪をまとめてもらってる女。
ストレッチをしてる女や携帯電話を弄る女。
それぞれに何かをしていた。
「仁お兄ちゃん、わかる?」
「いや、まだわからない」
「声を聞かなきゃわからないよ。どうしよう」
声の主がわからない。
姿を見ただけじゃわからないのも当然だ。
うろうろし始めたりおに気づいた年配の女性が、
「ビューティフルきもの!」
満面の笑みを浮かべて近づいた。



