『若恋』若恋編




「若、……それは、」

何かを言いかけて、榊の携帯電話から着信メロディが流れ会話が途切れた。


「誰からだ?」

「外にいる前広からです」

小さめの声で告げ、携帯を開き耳に当てる。


「若、彼女…天宮りおさんの家族が到着したそうです」

「……家族が来たか」



傍らで薬が効いて静かな呼吸をしている横顔を見る。

罵られても仕方ない。
殴られても蹴飛ばされても仕方ない。
ただ誠心誠意を尽くす。



「家族を応接室へ。俺が会いにいく。話はそこでする」

「わかりました。
前広、そのまま二階の応接室まで案内お願いします」

携帯を切り、榊が隣に立った。


「わたしも行きます」

「いや、榊は彼女についててもらう。成田を連れてく。医者から話をしたほうがわかってくれるだろう」

「しかし、」

「心配しなくてもそんくらい大丈夫だ」