榊が携帯電話を取り出し、前広に辺りに気を配るように話して、すぐに切った。
「若、彼女をどうするつもりですか?」
「俺が面倒をみる」
「彼女は両手が使えません。このままここで入院させていたほうが彼女のためでしょう」
「おい待て。俺のとこはこのままずっと入院っていうのはマズイ」
成田が横から口を挟み、
「奏、おまえが知ってる通り俺のところは入院患者は置いてねえし夜は俺しかいねぇ。転院なら友人のところに頼めるが俺のとこでずっと入院ってのは無理だ」
焦っていた。
「今は術後で動かすのは無理だが、状態が落ち着けば連れて帰る」
「若、それは……」
榊らしくなく言い澱んだがすぐに顔を上げた。
「連れて帰ったとしても彼女の世話するひとがいません」
男だらけの屋敷だ。
確かに彼女の世話ができるヤツがいるわけもない。
「俺がみる」
「若、」
榊がため息を深くついた。



