「りお?」



食事を作っていたりおの姿が一瞬で消えた。

もしかしたら、と。
思い当たるところに行くと、下を向き苦しげに息を吐いていた。


―――りお


「う、」


その背を撫でてやりたかったが我慢しりおの様子を見守る。



「……あか、ちゃんが、」


りおが震える両手で下腹を包む。


「……病院、行かなくちゃ」


そう呟いたりおからそっと離れて、何事もなかったかのようにソファーに座り雑誌を広げた。

つわりらしきものでりおが苦しんでいたのを見たのは(正確には見たわけとは違うが)三回目だ。

りおの腹の中には俺のガキがいるかもしれない。
そう思うと、自然と頬が緩んだ。


「りお、こっちに来い」


戻ってきたりおを招き寄せてその頬にキスをした。


「奏さん、あのね」


りおが切り出してくるのをドキドキしながら待った。