凍りついた空気を察して成田がドンと胸を叩いて、任せておけと啖呵を切った。
「………」
彼女の薄い口元から震える声が溢れ落ちる。
さっき引いたばかりの涙がまた溢れた。
「―――泣くな」
泣くな。
心臓を針で刺されたような痛みで気が遠くなりそうだ。
彼女を支えてる腕に力が入る。
彼女の溢れる涙を見ていられなくて指で拭う。
「成田は優秀な医者だ。任せておいたら大丈夫だからな」
彼女の頭を引き寄せて宥めた。
「俺が保証する。成田の腕は確かだ」
「ぐすっ、…はい」
「よし、いい子だ」
彼女が俺の声に耳を傾けようやく顔を上げた。
必死で笑顔を作ろうとする。
ズキン
痛々しいほどの笑顔。
ズキン
知らない。
女の涙が、無理に作ろうとしている笑顔が胸を掻き乱すなんて知らない。