『若恋』若恋編





「貸し切りの風呂は?」

「見た。奥の方まで見たがいねえ」

「大浴場じゃねえのか?」

「かもしれねえが、その他は探した。探してねえのはそこだけだ」

「大浴場には今俺たちがさっきまでいたがりおは見かけてねえ」

「ええ、わたしもりおさんを見てません」



しん。

急激に体の芯が冷えていく。
背筋に寒気が走った。



「くそっ」

りおの携帯番号を押すが出ない。
もしやと思い、部屋に戻るとテーブルの上で光り着信音が響いていた。

俺の後を追い、仁と毅も駆け込んできた。



「―――いない」

「待て、電話横に、」



見つけたのは白いメモ用紙。

縦書きで右肩上がりのりおの字だ。


「奏さんへ」

一行で胸がキリキリした。

「仲居さんから聞いた、日が沈むのが見える足湯に行ってきます。ちょうど時間的に今しか見られないのでひとりで行ってきます」