「……まさか…」



震える声がする。
りおの戸惑う声。


「……これが、もしかして…」




つわりか?



身に覚えがないわけじゃない。

龍神会を潰し、丸井の弔い合戦をした日にりおをめちゃめちゃに抱いた。


泣くりおを離さず抱き続けた。



―――あの夜のガキか?





「う、」

ザアザア
蛇口を捻る音と水の音。

戸口からりおの苦しげな息をする声に堪らなくなる。

今すぐ確かめたい。

あの切なさを抱いた夜の出来事は実になったのかと。



「り、お」

りおの影がまだ苦しげに動いている。
背中を擦って楽にしてやりたかった。

けれど動けない。
体が麻痺したまま足が動かない。