―――折れてる
腕を掠めた弾は運悪く一番厄介な場所に当たった。
見ただけでわかる。
肘からの出血はそれほどでもないのにこの腫れだ。
成田を見ると難しい顔をしていた。
成田は父に劣らない腕のいい医者だ。
すぐに気づいたようだった。
「んー、レントゲン撮るか」
ぼそり。
苦い薬を口にしたように顔をしかめて白衣を着た成田が呟いた。
「折れてるより厄介かもな」
―――厄介
「お嬢さん、歩けるかい?」
「……はい」
「じゃ、こっちに来て」
首を縦に振った彼女が左腕を庇いながら立ち上がり、ふらふらと寝台から降りるのを支えた。
「大丈夫か?」
「はい」
レントゲン室に入って用意した台の上に曲がって動かない腕を乗せた。
「奏は出てな」
真面目な表情で真っ直ぐに俺を見る。
出ていけと言ってるのがわかってるが彼女が倒れるんじゃないかと心配だ。
「…いちゃ、いけねえか?」
「いけなくはねえけど…じゃ、壁に掛けてあるのを身につけてくれ」



