『大神さん、……ひかるが、うちの娘が学校からの帰り道に連れ去られました。……大神さんひとりで来い。場所は大神さんがわかってると……電話があって』
電話口で声を詰まらせたのはりおの母親だった。
『わたしにはどうすることもできなくて……大神さんにただすがるしか』
「………」
『……どうか、ひかるを助けてください』
動きだした龍神会は、とうとうりおの家族にまで手をだしてきた。
「わかりました。必ず救いだします」
『……お願いします。大神さんしか頼るところがないんです』
嗚咽に変わる声が途切れた。
電話を握ったまま泣き崩れるりおの母親の姿が浮かぶ。
電話を切り、りおに知られないように内緒で車を裏口からだした。
―――龍神会
先日、りおを拐い損ねて負傷した若衆が多数でた。
明らかに戦争を仕掛けてきている。



