―――榊


わたしは大丈夫なので、りおさんを先に。

榊の無言で語る目を見た。


榊を頼むぞ。

後ろにいる仁と毅たちに目配せして、りおを抱き上げたまま二階へと上がる。


「奏さん、わたし大丈夫だよ。どこもケガしてないし歩けるよ」

「ああ、そうだな。だが黙って抱かれてろ」

「本当にわたしは大丈夫だから」


小刻みに震えてるのに大丈夫だと強がりを言うりおがいとおしくて抱き締めた腕に力が入る。



りおは知らない。

俺がどんなに愛しているか。

襲撃の知らせを聞いて、どんなに胸が潰れそうだったか。

この手に抱くまで何をも畏れない自分がりおを失うことを畏れたか。



―――失いたくない