身の安全を確保したい榊が言うのもわかってる。
けれど。
「……榊、俺が彼女に付き添う」
「?」
「彼女は俺の命の恩人だ、俺が面倒みる」
「………」
低く静かな声で言い。
腕の中にいる彼女を見た。
「指も、腕も手術が必要だろう。安心しろ。俺がついてる」
不安そうに涙を浮かべていた彼女の瞳から光る色が消えて小さく頷いた。
「よし、いい子だ」
そっと力を入れて抱き直すと榊が目を丸くしているのに気づいた。
「なんだ?」
「いえ、」
「おかしな奴だな。どうした?」
「―――若、」
戸惑い俺を見ている。
ガタン
榊が何かを言いかけた時に、車が揺れて抱き抱えていた彼女が痛みで声を上げた。
ズキン
耳に悲鳴を飲み込んだ小さな音が響いて、さっき起きた痛みがぶり返した。
ズキン
得体の知れない息苦しさは続く。
「若、どうしました?」
覗き込まれて。
そして、
彼女の反応で唐突に胸に痛みが走ることに気づいた。



