「仁はいるか?」
「おう」
ベンツのウインドウを下げさせ顔を寄せた仁に声を掛ける。
「仁、俺の後ろをついて来い。前広、成田のとこに急げ」
抱き抱えた腕の中の彼女は青ざめたままだ。
出血量が思ったよりも多い。
真っ赤な液体が彼女の服や俺のスーツを染めていく。
早く医者に診せなくては。
焦りが募る。
「処置の準備は出来てるそうだ」
「手術が必要だろう。成田の他にも医者がいる」
麻酔を掛けての処置が必要だ。
「その旨、成田に連絡しておきます」
「急いでくれ」
小刻みに震える彼女は懐の中から不安そうに俺を見上げた。
「しゅ、……手術?」
今にも泣き出しそうな瞳が俺を見上げている。
そんな顔をさせたいわけじゃない。
また胸に針を刺されるような痛みが走った。



