苦しげに呼吸して眉を寄せ、ハンカチから染み出た血が滴り落ちる。
少しの動きにも敏感に反応を示す。
「若、仁と一也が到着しました。店の者には一本渡しときましたので、騒ぎにはなりません」
「そうか」
「若、そのお嬢さんはわたしがお連れします」
彼女を抱き取ろうとして差し出した榊の腕を見る。
ズキン
体の奥底からまた得体のしれない痛みが沸き上がってきた。
感じたことのない痛みだ。
鋭いキリか何かで心臓を刺されたかのようだ。
「いや、俺が運ぼう」
「…若?」
榊の怪訝そうな声が掛けられた。
「行くぞ」
伸べられた手を断り、彼女に負担が掛からないように包み込みゆっくり抱え上げた。
「い、た、」
腕の痺れと激痛に声を上げた彼女の横顔にまた心臓が跳ねる。
「悪りぃな、少しだけ我慢してくれ」
耳元で告げ、ゆっくりと歩き車へ乗り込んだ。



