「電話は誰からだった?」
「……榊からだ」
「じゃあ、仁に何かあったのか?」
「違う」
答えると、ふたりは更に怪訝な顔をして眉根を寄せた。
「もしかして…これ、か?」
兄貴が小指を立てて見せた。
黙ったままの俺を見て、
「へえ、おまえがねぇ」
「何?嘘だろ?奏に女?遊びの女じゃなくてか?」
「いや、噂によると本気の女が出来たらしいぞ。最近は女遊びをやめてるらしい」
くっくっ
おかしいだろと頬杖を付き兄貴が笑った。
「おまえにそんな顔をさせた女の顔を見てみたいもんだな。一度連れてこいよ。あ、その前に……その女に何かあったようだな」
「奏、緊急なら行ってこい」
笑みを消して真顔でふたりが俺を見つめた。
「こんなわけのわからん難しいプロジェクトは俺たちに任せとけ」
「いつもおまえにばかり苦労掛けてるんだ。行ってやれ」
「悪りぃ兄貴」
ふたりに背中を押されて会長室を飛び出した。
いったい何がふたりに起こった?