「約束だよ」 「ああ」 「りおさん、先にどうぞ」 うん。 白い花の香りがした。 榊が開けたドアからりおが降りて――― 降りるりおを背中から思わず抱き締めた。 「……そ、奏さん?」 「………」 ギュッ 「そ、奏さん?」 「………」 「奏…、さん?」 「悪りぃ、このままで」 抱き締めたりおの温もり。 誰にも触れられてない白い花の香りがする。 「……よかった」 「え?」 「いや」 腹の中の熱い塊が喉まできていたのに抱き締めた瞬間に熱が消えた。 微かに震える肩を抱き締める。