―――胸が痛い
今までに感じたことのない痛みが全身に広がっていく。
手足に力が入って震えてくる。
「い、た、」
腕の中に抱いた彼女が身動ぎする。
「前広、この娘のカバン持て」
「はい」
「この娘の家族の連絡先、学生手帳かなんか入ってねえか?」
彼女のすぐそばには読みかけの本と藍色のカバンが転がっていた。
「開けるぞ」
彼女と前広が頷き、カバンから学生手帳を取り出した。
「家族の携帯連絡先書いてねぇか?」
「ありました。掛けますか?」
「そうしろ」
一瞬の油断の巻き添えで撃たれてしまった。
隠したとしてもどうせわかることだ。
話すなら早い方がいい。
「いや、待て。榊に掛けさせろ」
「はい」
「家族にはとりあえず連絡を入れる。悪いようにはしねえからもう少しだけ待ってろ。すぐに車が来る」
抱き抱え頷いた彼女の体は柔らかくて熱かった。



