仁の運転する車で西高校へ向かう。
校舎前に車を寄せる前に榊がりおへ電話を掛けた。
「りおさんは視聴覚委員会があるとのことで、後、10分ほどで出てくると思います」
「ああ」
時間が流れるのが遅い。
無事な姿を見るまではと消えそうになる意識を繋ぎ止める。
夢で見たものが現実ではないと確かめたい。
「若、」
「……大丈夫、だ」
背もたれに体を預けて校舎を見上げる。
夏の暑さが厳しくなって日に照り返されて燃えるような校舎。
次々と帰宅する生徒たち。
「若、」
「りお、」
校舎から出てきたりおはスクールバックを右手に持ち、その隣には立花樹の姿が当然のようにあった。
「あいつ」
仁が舌打ちをする。
ふたりの並んでいる姿を見たくないのに現実は残酷だ。
それでもふたりから目が離せない。