「般若になった若が太刀を抜いた時には、あの生徒らを斬り捨てなかっただけでもありがたく思いました」

「……できればあの場で始末したかったがな」

「若、それはりおさんが望んでいません」

「それはわかってる」


だからこそ、刀身を鞘に納めることができた。
ただ、りおが望んだなら斬り捨てるのもできた。



「りおさんは優しいひとです。たとえ、自分の身に何が起こったとしてもそれはそれとして受け入れるでしょう。
他人が傷つくことを悲しむ。彼女はそういう人です」


実際、ひとことの恨みも聞いたことがない。

学校内であった楽しかった話はよく教えてくれるが他人の悪口や噂話をしたことがなかった。

ジャージが切り裂かれても替わりのジャージを持って次の日には何事もなかったかのように笑顔で登校した。



「優しくて強いひとですね」


榊が笑みを含み言うと、自然に気持ちが凪いでくる。