「若、りおさんの件は滞りなく済みました」



一階のテラスの白いソファーにりおの読みかけの小説がある。
りおがキッチンにお菓子を取りに行っている間に榊とこっそりと会話を交わす。


「害を為す輩は仁に任せました。自主退学3名、もうりおさんに手出しをしてくるような連中はいません。」

「脅かしたのか?」

「いえ、話し合わせていただきました。嫌がらせが続けば今後どうなるのかと」

「……で?」

「集団というのはおかしいもので、りおさんを害した輩がいなくなると自然に元のように大人しくなるものです」

「そうさせるように榊、おまえが仕向けたんだろ?」

「わたしはあくまでもりおさんに害を為す連中だけ排除しただけですので」



りおが雨の中で泣き崩れてから一月。

あれからりおがひとりで泣く姿を見ていない。

あの雨の夜にりおを傷つけた連中に太刀を抜いてから、彼、彼女らは俺の前に、りおの前に姿を現さない。