『若恋』若恋編





「しっかりしろ!」



―――血


抱き止めた彼女から流れ出る血。

右手の指、小指が半分千切れて皮一枚でぶら下がっている。

その血がボタボタと滴り、左腕の制服にも穴が空いてそこから出血している。



「若、成田のところに運びますか?」

「頼む」

「今、一也を呼びましたので、あと数分で到着するでしょう」

「…数分か…待てねえな。榊、押さえるものなんかねえか?」


撃たれて千切れた彼女の指を押さえるもの。
ハンカチでもなんでもいい。


「若、これを使ってください」

「悪いな」

「いえ。」


榊に差し出されたハンカチで彼女の血にまみれた指を包んで縛る。



「あんたを巻き込むつもりはなかったんだ。すまねぇな」


青ざめた顔の彼女に謝ると首を横に振った。


「みんなが騒ぎ出してます。若、どうしますか?」

「金でも握らせて黙らせろ。それより車はまだか?」

「もうそろそろ到着します」