「りお、俺はな」 「え?」 「おまえが…」 言いかけてやめた。 言えば永遠にりおを失う。 「…いや、なんでもない」 一度は開いた口を閉ざす。 そして大きく息を吸う。 「ホタルきれいだな」 「うん」 「よかったな」 「うん」 りおが俺から離れて、ホタルの群れに手を伸ばす。 「線香花火みたいだね」 「ああ、きれいだ」 手を伸ばす。 ホタルがふわりと浮き光を点滅させながらりおのその手に舞い降りる。 「奏さん…ありがとう。わたし、この風景忘れないよ」 「ああ、」 「忘れないよ」