パン、パン、パン


「!!」


立て続けに空気を引き裂く乾いた音が、耳先を、脇を過ぎる。



一瞬。

赤い花が散ったと思った。
鮮やかな赤。



カチカチカチ
カチカチカチ

引き金を何度引くも弾は出ない。




「ち、しくじった!!」

苦々しげに頬を歪め舌打ちをする男の後ろで。

何事が起きたのかと、本屋からも、隣の電器店からも人が出てきたのが見えた。


「ちっ、仕方ねえ。引き上げるぜ!」

誰かの悲鳴で、じりじりと俺に迫っていた輪が崩れ、引き上げの声が上がった。


「次は必ず取るからなっ!」

捨て台詞を残し派手な車に奴らが乗り込みタイヤを鳴らしながら散った。




ボタッ、ポタッ

両手を広げていた彼女の体から滴り落ちるのは。

―――血。



ぐらりと影が揺れて、ゆっくりと彼女の体が傾いだ。


「おい!」

崩れ落ちる彼女を後ろから抱き止めた。