~20才の冬~

夕方のダンスレッスンを済ませ 保育園に預けた子供を迎えにレッスン場を出た

周りを見渡すと 街には たくさんの恋人たちが

幸せそうに手をつないで歩いている

リュウヤさん・・・元気にしてるかな?

あれから6年も経つというのに

今でも思い出す 大切な写真も飾ったまま

この6年の間に 色んな経験をして 少しは大人になったはずなのに

あの頃の事を考えると未だに顔がにやけてしまう

(中学生のままみたい)なんて思っていたら

あっという間に保育園に着いた

「ルイ!メイ!」

「ママ!!」

「楽しかった?帰ろっか」

「今日は おばぁちゃんのトコ?」

「ママまだお仕事だから おばぁちゃんの所で待っててくれる?」

「わかった!」

母に子供を預け 急いでスタジオに向かう

「ただいま」

「おかえり なぁナオ これ一緒に行くか?」

兄が差し出したのは 今大人気の〈篠崎さゆり〉のライブチケットだった

「えっでも ユキさんと行くんじゃなかったの?」

「それがさぁ ユキ用事ができて行けないんだよ チケット1枚あまるし
 ナオ明日行ける?」

「いいの?行きたい!!あっでもルイ達どうしよ・・」

「おかんに預けて行けば大丈夫だろ」

「そうかな?じゃあ迎えに行った時頼んでみる」

「なら明日16時に迎えに行くからな」

「うん」

篠崎さゆりのライブは ダンサーのレベルが高いって聞くし
パフォーマンスもすごいらしく 1度は行きたいと思っていたから
すごく嬉しかった

次の日約束通り 兄が迎えに来てくれ
グッズも買っちゃおうと ワクワクしながら 会場に向かっていた

会場に着くと すでに人が多くて

「グッズ売場まで なかなか辿り着けないかな」 

「せっかく来たんだし 席で待ってるから行ってきな」

「うん」

人に押されながらも グッズ売り場に何とか辿り着き

ペンライト等を買って席に向かった

「はいっお兄ちゃんのペンライト」

「おぉサンキュ」

席に着き 買った物を兄に見せびらかしながら 開演を待っていた

「ナオ お前さぁ リュウヤさん覚えてる?」

「えっ!」

私は驚いた 兄がリュウヤの名前を出したのは 6年振りだった

「覚えてるけど なんで?」

「そりゃ覚えてるよな 未だに写真持ってるし」

「はぁっ?何で知ってるの?」

「お前なぁ 普通に家に飾ってて 何で知ってるのっておかしくねぇ?」

「あっ・・・まぁね」

「この前久しぶりに連絡があって 離婚したらしいんだ」

「・・・そうなんだ・・・」

「出てるよ このライブに」

「えっ?」

今何て?と 聞き返そうとした時 会場の照明が消え  

大歓声に包まれた