兄が連れて来た所は 兄が通っているダンス教室だった

兄の夢はダンサーになって将来は自分で教室を開き人に教えられる様になる事で

小さい頃からダンスを習い 留学もし 今は ここでバイトとして

幅広い年代の人にダンスを教えていた

私もダンスは嫌いではなく 小さい頃は兄と一緒に来て
 
兄の横で真似をして踊っていたが 習うまでには至らなかった

「なんで ここ?」

「何も気にせず 文句を言わずに 黙って来いって言ったろ 行くぞ」

兄は慣れた足取りで教室に入っていった

兄に付いて教室に入ると 10人以上の人が息の合ったダンスをしていた

その中で 一番動きのキレが良く 私みたいな素人が見ても
 
上手い!と思える様なダンスをしている人がいた

「あの人すごい・・・」

「だろ?あの人今度のステージで 兄ちゃんと一緒に踊る人だよ
 いつも海外で活動してるんだけど 最近日本に帰ってきたんだよ」

「そうなんだ」

その人のダンスに見とれている私を見て

「挨拶するか?」

「えっ?でも・・」

「良いから 良いから」

そう言いながら 曲が終わり休憩になると兄は その人に声をかけた

「お疲れ様」

「おぉミオじゃん お疲れ様 あれ?今日は休みじゃなかったっけ?」

「そうなんだけど 妹に練習風景見せようと思って ナオ挨拶しなさい」

「えっ!あっ初めまして 妹のナオです」

「初めまして。ヤマサト リュウヤです。よろしくね」

「こちらこそ」

何気なくされた握手に凄くドキドキして 顔が一気に熱くなった

「ナオちゃんはダンスはしないの?」

「いや私は・・」

「ちょっと踊ってみない?」

「えっでも、お兄ちゃん」

「いいじゃん ナオ やってみなよ」

「えーっ無理だって」

「大丈夫だよ おいで」

そう言ってリュウヤは私の手を引いて

「俺の真似してみて」

彼が踊るのを見ながら一生懸命真似をした

「おぉ!さすがミオの妹 すごいじゃん 習ってないの?」

「小さい時 ここに来て 真似をしてた位で」

「もったいないよ 習ったら良いのに」

「本当ですか なんか凄く楽しかったしやってみようかな?」

「うん! 楽しいって気持ちが一番大事だよ」

兄も私が初めて何かをやりたいと言い出した事に驚いていたが
自分が好きなダンスだという事に喜んでいた

帰り際 彼は優しい笑顔で「また一緒に踊ろう」と言ってくれた