「……」
目を開ける。
でもそこは真っ暗で本当に目を開けたか疑いそうになる。
(あの…だれかいますか?)
「う…」
……声が出ない…
どうし…
ガチャ…
立とうとしたが足に鎖らしきものがついていて動けない。
手は後ろで縛られていて、何もできない。

「おい…おい…」
ビクッ…
どこからかボソっと聞こえた声…
(だれ?…)

あたりを見渡す。
(あっ!)
物陰から翔と成宮さんが顔をのぞかしている。
そしてあたりを見渡し、誰もいないのを確認するとこっちに走ってきた。
(来ちゃダメ!…逃げて!)
精一杯伝えようとするが…伝わらない。
「今取るから」
翔が口に張ってあるものを取ってくれた。
「お願い。もういいから、もう十分だから逃げて…」
二人は、何もなかった用に鎖を外しにかかる。
「お願い…お願いだから。翔や成宮さんには、ファンや応援してくれる人がいる…だから…」
そこで区切り呼吸を整える。
「だから私何かのためより…周りの人を優先して…?」
その頃にはもう鎖も取れていた。
「行こう。」
まだ座り込んでいる私に翔が手を伸ばす。
「もう…迷惑かけられない…」
「そんなことない。」
翔が震えた声で言う…
「前も和也さんや正樹さんに助けられた…だけどまたこうなちゃった…ここで逃げたらまた…」
「そんなことない…」
さっきよりも声が小さく、か細くなっていた。
「だから…」
「そんなことさせない!!…いくら捕まったって絶対助けるから…」
「俺も力になるから!」
成宮さんも頷く。
ガシッ…
目を真っ赤にさせた翔が腕をつかんで走り出した。
…私は、その手を振りほどく気になれなかった。
  

やっと建物を出て外の空気が吸えた。
ここまで誰にも会わなかった…。
…何かがおかしい…

その時…
「どこ行く気?…逃げるなら容赦しないよ…?」
今まで建物の中で誰にも会わなかった理由がわかった気がする。

そこには…
数え切れないほどの男の人が銃を構えていた。
私たちは逃げることにした。
バンバンバンバン
男が撃ってきた。
その時。
「うっ!!!」
成宮さんが倒れた。
足を押さえてうずくまっている。
球が足を掠めたみたいだ。

危ない!!

私は無意識に成宮さんの上に覆い被さっていた。
「うぅ…」
脇腹に球が当たる。
成宮さんにもたれかかってしまった。
「はぁ…はぁ…」
激しい痛みが体を襲う。

もうダメ…

そう思ったその時。