私はそれが不思議で、「どうしたの?」と訊くと、 凛子は首を横に振って「何でもないよ」と笑った。 「そっか。ならいいんだけど」 「……ただ」 凛子はそこで言葉を止めて、また浮かない顔をして雄大君を見た。 「ただ?」 凛子は雄大君を見たまま、「ただ……」と口を開いた。 「……ただ、あんなに人に囲まれて迷惑そうだなって」 「あぁ、うん、確かに」 私も凛子から雄大君の方に目を向けた。