日音子は昔から怖がりな子であった。小さな物音にも、雷鳴にも、物陰にも過敏な程に反応した。彼女は押し入れのような狭い場所に隠れることが好きだった。

彼女の実家は深い森の奥の小さな村にある。学校は小中とも同じ校舎であり、生徒数は僅か27名。創立当初から工事一つされていない校舎はあちらこちらが破損している。

彼女は今年度、中学三年生。唯一の卒業生である。

どうやら日音子の血縁は皆が霊媒体質らしく、“そういったこと”を仕事としていた。婿として迎えられた父だけが、彼女の家では霊感が弱い。どういう訳か、稀に見えることもあるらしいが。影響が何とかかんとか、だと祖父が言っていたけれど、日音子は覚えていない。

そして、そのような家族の中でも、日音子の霊力は他を逸したものだった。それを心配してのことだろう。日音子は「強くなれる」と噂される天神学園高等部に入学することとなった。