「ちょっと、ど、どうし」

「うるさい」

「ん、え、」再び暗くなる声色を聞き、アルベルトは愛の髪に顔を寄せた。

「あー、もう。うるさい。何で分からないんだい。僕は学園長で、君は生徒だ」

二人の小指を繋ぐ糸が、照れるように、しゅんと縮む。瑠璃色の透明度の高い瞳に、感情の波が現れる。柔らかく、優しいその感情を、抱き締められている愛が見ることなどできないが。

「ああ、でも一番分かってないのは、僕の方かもしれないね」



瞼を下ろして、上げる。すると、瑠璃色の瞳に、街並みが映った。びょうびょうと風が吹き荒れる。あれ、と彼は思う。掌の上に柔らかい羽毛に包まれた小鳥がとまっている。黒い瞳には、憧憬と恋慕の念が浮かんでいる。それが、どこかあのひとの面影と重なって。彼は、そうっと微笑んだ。光り輝く夜空は、矢張りラピスラズリの色をしていた。