「たっだいまー」

乙はカッターシャツから零れ落ちんばかりの巨乳を揺らしながら、海底に佇む竜宮城を訪れた。ミニスカートから覗く、肉付きの良い女らしい太股の白さを、靴下の黒が強調する。紅塗りの古めかしい廊下を、制服姿の今時の高校生が歩く何ぞ、ちゃんちゃら可笑しい景色である。

家臣の魚達は、乙を目にする度に、ギョッと驚く。それは乙姫の唐突な帰省に対する驚愕と、妖艶な太股へのあれやこれやな卑しい思考が原因にある。

「姫様!そのお召し物は、」駆け寄って来たタコの女中に、乙は目も向けずに口を開く。

「制服じゃ。制服」

「は、破廉恥な!それでは、あの穢らわしい下界の魚に邪な眼で姫様が見られてしまいます」

乙の足が静止する。彼女の顔に笑顔が浮かぶ。華が満開に咲くかの如き笑顔は、子供のそれとは思えない程に妖艶だ。女中は安心したように息を吐く。しかし。

「貴様、穢らわしい、とは魚尾のことか」

鋭く凍る視線が、女中に向けられる。