「いらっしゃい」

地面の“向こう側”で、人々が揺らめいている。水面を眺めているように、それらは曖昧な景色だ。乙の姿が反射して地面に映っている。魚尾に特殊能力があったなあ、という考えが彼女の頭の隅を掠めた。


「ねえ、一緒に踊りませんか」

彼の翠色の髪の毛が、靡く。きらきらと、景色が揺れる。泡沫は真珠を彷彿とさせる。揺れる波が音を奏でる。オーケストラの演奏は、地面を震わせ、透明な黄金色に世界を染め上げる。乾いていた唇を、乙は彼の唇と重ねた。それは二人だけに通じる、了承の合図だった。


「 Joyeux Noel 、」