「ゆっくりでいいです。何かあるですか?」

「や……だ」


縋りつく声に、胸の奥が擽られる。行って欲しくないのか、そうかそうか。子犬を拾った空間の支配者(スペイス・ジャッカー)の気分だ、とエンリィは満足気な笑みを浮かべて、温厚そうな顔をした青年を見る。青年が、怠そうに口を動かした。


「焼きそば、パンダ、買ってこい」

「うん?」

聞き取れなかっただけだろう、と彼はもう一度微笑んで青年を見た。温厚そうで、人には命令何ぞしなさそうな、

「近くのコンビニの!焼きそばパンダ!」

「え?は?」

「何か、文句あんのか。クズ」

恩を仇で返す、とはこのことか。エンリィは高ぶった感情を、言葉として吐き出した。

「な、ななななな何を!無礼な!僕はゼウスと同等の神なのですよ!ソクラテスよりも賢者なのです!それなのに、何を!」