まさかな、幽霊じゃあるまい。脳内神モードのエンリィは、一瞬だけ浮かんだ嫌な予感を消去した。

玄関の覗き穴、というのは外からでも中で電気が付いているか、人の動きがあるか、という程度ならば確認が出来る。彼は目を覗き穴に近付けると、中を凝視した。電気が付いている節はない上に、人が動く気配もない。

となると、いやいや、寝ているのかもよ?寝相悪い人かもよ?と自らの説得に取り掛かるエンリィ。冷や汗が、じんわりと額に浮かぶ。そこで、彼は何気なしに扉の取っ手に手を掛けた。すると彼の力に逆らうことなく、それは半周回され、扉が開かれる準備が出来上がってしまった。

もうこうなってしまうと、引くに引けない何かが彼の背中を押した。自暴自棄に陥った彼は、ええい、と扉を勢いよく開けた。そしたら、いたのだ。

人が倒れていた。