「クリスマステロの日、二人っきりで、逃げ出してしまいませんか」

アルベルトは膝に埋めていた顔を上げる。彼の眼前まで来ていた愛の耳は僅かに赤いものの、瞳は画策に煌めいていた。学園長である己が何が起こるか分からないクリスマステロの日──クリスマステロの翌日、冷静な状態に戻った時の辛さを、飲み会の時に教師陣から教わった──に、抜け出しても良いものか、ともアルベルトは思ったが。

(まあ、理事長が、何とかしてくれるかな)

アルベルトは愛の腕を掴むと、額をごつりと合わせた。愛の頬は直後、林檎の如く赤く染められる。二人は至近距離で視線を絡ませる。そうして、秘密基地を見つけた子供の様に、微笑み合う。言葉はいらない。柔らかい日差しは、床の上で、猫の如く寝そべっていた。