しかし、愛はそこで違和感を覚える。


「いと、どーしたの?」


アルベルトの目が、据わっている。

「どうしたのってば」舌足らずの言葉が、妙に色気を孕んでいる。平常よりも、だらけてボタンが外れている襟元から見える鎖骨に目が行く。皮膚は僅かに湿って、頬は上気している。今の彼の状態を端的に一言で表現するならば、エロい、である。

「アルベルトさん、まさか、酔ってます?」

愛がそう口にすれば、アルベルトは拗ねて、不機嫌を顔に露わにした。

「よってない」

典型的な、酔っ払いだ。

これは、きっと。愛は思考を巡らせる。土曜日の夜中にスーツなのは、金曜日から酒宴を催していたのだろう、大方、男勝りな龍娘先生辺りが。酒には多少免疫のあるアルベルトでも珍しく酔ってしまっている。明日に壮絶な二日酔いが訪れるであろうキャンペーン先生のことを思うと、心が痛んだ。