だから、似てるけど、似てはいないのだ。その証拠に彼女をよく知る人々は彼女を“小夜”と外すことなく言い当ててくれる。なのに、半数の生徒は口を開けば、おとぎおとぎおとぎ。小夜は正直参っていた。小心者故に違うのだと伝える事も出来ず、悪口を聞き続ける。他人の悪口程、居心地の悪い物は無い。


(止めさせた方が良いのかな、悪口)

うん、そうしよう。食事の終わった小夜は決心すると、後ろの席に座る男子生徒達に話し掛けようとして、止まった。自分の前の席に、座ったのだ。誰が、とは無論。


「相席するぞ、うん、構わないな」


現在、小夜の悩みの種である人物、おとぎである。オムライスと分厚い茶色い本を両手に抱えて、何が愉しいのか、にこにこと。後ろの男子生徒達も、どうやら向かいに座ったのが本物であると気付いたらしい、居心地悪さに沈黙を選択した。